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CDAD治療薬について [Clostridium difficile]

治療を開始する前に、発症の原因となった抗菌薬の投与を可能な限り中止することが重要である。
CDAD治療薬として用いられるのは、塩酸バンコマイシンおよびメトロニダゾールの内服で、両薬剤の有効率はいずれも90%以上とほぼ同等であり、3日以内に症状の改善が期待できる。
海外では両薬剤の効果に有意な差がないこと、安価なことやVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)の危険性を考慮してメトロニダゾールの内服が第1選択となっている。
しかしながら、日本においてメトロニダゾールの内服は適応がないため第1選択としての使用は注意が必要である。

経口バンコマイシンの投与量
1回125mg(1/4バイアル) 1日4回 10~14日間
重症の場合には:症状により用量を考慮)
1回250mg(1/2バイアル)
1回500mg(  1バイアル) 1日4回 10~14日間

経口メトロニダゾールの投与量
1回250mg(1錠) 1日4回 10~14日間
あるいは
1回500mg(2錠) 1日3回 10~14日間

経口バンコマイシン
長所:良好な効果,耐性なし
短所:再燃,再感染率が高い。VREが出現する可能性あり。効果。

経口メトロニダゾール
長所:バンコマイシンと同等の効果。IDSA/CDC/SHEAにより推奨。安価。
短所:in vitro で耐性を示すものが少数あり、いくつかの報告でバンコマイシンより効果が劣るとされている。再燃あり。

両薬剤の相違点として、経口バンコマイシンはほとんど吸収されないのに対して経口メトロニダゾールは上部消化管より容易に吸収されるため(バイオアベイラビリティは100%)、嘔気などの副作用に注意する必要がある。
その他に経口メトロニダゾールは、禁忌事項として血液疾患患者,脳・脊髄に器質的疾患を有する患者,妊娠3ヶ月以内の患者となっているため、患者背景についても考慮する必要がある。そして腎不全時には減量も必要。

再発には、治療で排除できなかった消化管内のC.difficile により症状が引き起こされる再燃と、新しい菌株を獲得することによって再び発症する再感染がある。
一旦攪乱された腸内フローラが回復するには2~3か月間必要とも言われており、その間は、再びCDADを発症しやすい状態にあるので、バンコマイシンあるいはメトロニダゾール内服終了後2カ月間は、再燃あるいは再感染の可能性が高いことを考慮して、抗菌薬の使用や下痢症状には注意が必要である。

当院は感染症科の無い一般病院ですから、メトロニダゾールを推奨することはできません。処方が出れば、あぁCDかぁ、ということで目をつむって調剤している現状です。抗菌化学療法でよく遭遇する理想と現実の一つですね。。。


今日子供がインフルエンザで熱発し、早速受診したところA型でした。リレンザをもらってきていました。11月にワクチンを打ったのですが、空振りでしょうか。
しかしマスクも高いですねぇ。



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C.difficile が産生するトキシン [Clostridium difficile]

C.difficile が産生するトキシン

Toxin A :腸管毒素 enterotoxin 臨床的にもっとも病原性に関与するとされている。

Toxin B :細胞毒素 cytotoxin

※以前、毒素産生株は Toxin A と B両方の毒素を産生するとされていたが、近年 Toxin A-Toxin B+ が報告されている。日本でも散発的に集団発生事例が見られている。

Binary toxin :第3の Toxin といわれる。近年、北米,欧州で流行している菌株はこの毒素を産生する。しかし、このToxinの病原性についてはまだ良くわかっていない。

※ BI/NAP1/027 株 は、高齢者を中心に欧米で流行し、重篤な合併症を呈したり、死亡率が6.9%と高いことが知られており、Binary toxin を産生する。
通常より病原性が強い理由として、tcd A,tcd B に負の調節機能を持つ遺伝子 tcd C に一部欠失があることから毒素の産生量が多いことが挙げられている。

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CDADの発症機序と症状 [Clostridium difficile]

CDADの発症機序

1.抗菌薬などによる腸内細菌叢の撹乱
2.毒素産生性の C.difficile によるコロナイゼーション(定着)
3.toxin A 及び(もしくは)B の産生に伴う局所炎症反応による標的細胞の変化
4.粘膜の障害と炎症
以上の経過を経て発症するものとされている。



CDADの症状

抗菌薬治療開始5~10日後に発症することが多い。
しかし、抗菌薬投与初日に発症したり、終了10週間後に発症することもある。

軽症・中等症:軽い下痢,水様性下痢,腹痛,発熱
重   症 :血性下痢,激しい腹痛,腹部の圧痛,偽膜性腸炎,腸捻転,蛋白漏出性腸炎
最 重 症 :トキシックメガコロン(閉塞機転のない結腸の急速な拡張;>6cm 死亡率64%),腸穿孔

白血球上昇:通常15,000前後。類白血病反応がみられることが有。

再燃:約20%にみられる

鑑別診断:細菌性腸炎(特にサルモネラ),薬剤性腸炎,虚血性腸炎,炎症性腸疾患など







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Clostridium difficile 関連下痢症 (1) [Clostridium difficile]

抗菌薬が全身投与されると腸内の正常細菌叢が破綻し、Clostridium difficile 関連下痢症(Clostridium difficile-associated disease;CDAD )が起こる。

Clostridium difficile は、偏性嫌気性グラム陽性桿菌で芽胞を有しており、成人で2%、老人で10~20%、乳幼児では最大50%に無症候性の腸内菌叢集落を形成する。
※消化管保有率の報告はさまざま有り一定でない。

芽胞を形成することから各種消毒薬に抵抗性であり、環境表面に約5ヶ月は生存するとされている。

CDADは、抗菌薬の使用1~2週間後に下痢、発熱、腹痛を伴い、まれに1~2ヶ月後でも発症することがある。
CDADだけでなく、抗菌薬が全身投与された場合には腸内の正常細菌叢が破綻し、炭水化物の分解が障害され腸内の浸透圧上昇や水分の再吸収阻害により下痢を生じるため、抗菌薬使用下においては抗菌薬関連の下痢、とくにCDADに注意する必要がある。

また、CDAD発症の患者側のリスク因子には、入院期間の延長や高齢者、経管栄養の施行やH2受容体拮抗薬や抗菌薬の使用が考えられる。
CDAD発症のリスクは、ほとんどすべての抗菌薬が有しているが、リスクの大きさは抗菌薬により違いがある。

CDADの原因になりやすい抗菌薬
・セファロスポリン系(特に第2,第3世代)
・アンピシリン,アモキシシリン(その他のペニシリン)
・クリンダマイシン
・エリスロマイシンなどのマクロライド系
・テトラサイクリン系
・フルオロキノロン系
・ST合剤

CDADの原因となりにくい抗菌薬
・メトロニダゾール
・アムホテリシンB
・アミノグリコシド
・リファンピシン
・バンコマイシン
・サルファ剤
・β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン

CDAD発症の危険因子(まとめ)
1.抗菌薬の長期投与,大量投与,多種類投与(以前はクリンダマイシン,セフェム系が、近年ではフルオロキノロン)
2.長期入院
3.高齢者
4.制酸剤・H2ブロッカー投与
5.消化管手術
6.内視鏡検査
7.抗蠕動薬投与
8.その他:低アルブミン血症,抗がん剤の投与など

CDADは院内でも継続的に起こっていますが、やはり腹部外科領域でその発生頻度が高いようです。どの施設でも一定の傾向があるのではないかと思いますが、CDADの管理はまず取り組むべき重要な課題の一つだと考えています。






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